ERPというと、かつては大企業を中心に導入されていたイメージがありますが、業種や企業規模にあわせた多様な製品・サービスが登場し、幅広い企業での導入が進んできました。特に近年は、働き方の多様化やデータ活用推進などを背景に、オンプレミスからクラウドへ移行するなどのERP見直しや、ERP新規導入を検討する中小企業も増えています。では、中小企業がERPを選ぶ際はどういった点に気をつければよいのでしょうか?ERPの基本・動向から、選定時の注意点などをまとめて解説します。

ERPとは?

ERP(Enterprise Resource Planning)は、「会計」「販売」「生産」「人事」「物流」など様々な業務に必要な機能を統合したシステムを指します。これにより、企業経営に欠かせない「ヒト」「モノ」「カネ」の流れを一元管理し、会社状況の的確な把握・コントロールを目指すものです。

従来、ERPはオンプレミスに大規模な環境を構築する必要があり、エンタープライズ企業を中心に活用されていましたが、小規模で導入できる製品や、業種に特化したパッケージなどの登場により、中小企業へと広がっていきました。さらにここ数年は、コロナ禍によるテレワークの普及など働き方の多様化を背景に、場所を問わずに利用できるクラウド型のERPが注目を集めています。オンプレミスERPの老朽化にともなうクラウド移行のほか、これまで業務ごとにバラバラのシステムを利用していた企業がクラウド型ERPを導入して統合するケースも増えています。

中小企業が抱える課題

コストを抑えて導入できるクラウド型ERPの登場により、導入のハードルが下がったことに加え、中小企業が抱える様々な問題もERP導入が進む要因として挙げられます。


  • 労働生産性が低い・非効率な業務が多い
  • 生産性向上や業務効率化は多くの企業にとって課題です。しかし、中小企業では「業務ごとにバラバラのシステムを利用しており、二重入力が発生する」「アナログ業務(紙でのやりとり)があり、オフィスに行かなければ詳細がわからない」など非効率なプロセスが残るケースも少なくありません。


  • スピーディー・タイムリーなシステム導入が難しい
  • 社会情勢や顧客ニーズの急速な変化に対応するには、状況をリアルタイムに把握し、迅速に経営判断することが求められます。しかし、既存システムが分断されていて、的確な状況把握が難しいうえ、バラバラのシステムをそれぞれ改修しなければならず、対応に時間がかかってしまう、といった企業も多いのが現状です。


  • システムの老朽化が進んでいる
  • 近年、データ活用が注目されていますが、中小企業は古いシステムを使い続けていることも多く、思ったようにデータを活用できないことも。オンプレミスの場合は、ハードウェアの老朽化も課題です。

    中小企業におけるERPの必要性

    これらの課題の解決策として期待されるのがERPです。なんといっても、情報を一元管理できるようになるメリットは大きく、様々な効果をもたらします。

    • 業務効率化:システム統合により、二重入力や複雑な業務プロセスがなくなり、業務を効率化
    • データ活用:データの一元管理により、分析が容易になり、データ活用につながる
    • 迅速な経営判断:全社の状況を把握しやすくなり、迅速に判断できるように
    • 変化への対応:BI/AIなど、新たなニーズに応える新機能などが提供される

    企業として求められる生産性の向上、迅速な経営判断、変化への対応などを進めるためにも、ERP導入の必要性が高まっていると言えるでしょう。

    ERPのデメリット

    ERPのデメリットとしては「システムに業務を合わせる必要がある」ことが挙げられます。もちろん、自社業務にあわせた機能をカスタマイズ開発することはできますが、コストがかかる上、運用・メンテナンスの負担も大きくなるため、できる限り標準機能のまま利用する傾向が強まっています。特にクラウドサービスは、バージョンアップの頻度が高く、カスタマイズした機能についてバージョンアップに対応し続けるのは相当な負担となり、現実的とは言えません。

    そもそも、ERPは「標準的な業務」に対応した機能がそろえられています。自社の強みとなる特殊な業務など、なかにはカスタマイズ開発すべきものもありますが、なんでもカスタマイズするのではなく、基本的には標準に業務を合わせることが推奨されます。そのため、既存業務とのギャップをどう解消するか、現場をどうフォローするかなども事前に検討する必要があります。

    ERPの選定ポイント

    ERPを選定する際には、「いかに自社の業務にマッチするものを導入するか」が重要になります。その基準は企業によって様々で、自社がERPに求める要件を1つずつ挙げるしかありませんが、例えば下記のようなポイントから検討するとよいでしょう。

    • 自社の業務に適しているか:業界特有の処理などに対応しているかをチェック。業種・業界に特化した製品も。
    • コストと機能のバランス:大企業向け製品は豊富な機能が搭載される一方、高額なことも。コストと要件が合うかは要検討。
    • ベンダの経験:現場業務とのギャップ解消のためにカスタマイズが必要になるケースを見据え、ベンダの経験・実績・サポート体制などは確認を。
    • オンプレミスかクラウドか:近年はクラウドが主流ですが、セキュリティなどからオンプレミス導入することも。まずは自社の要件をチェック。

    ERP導入時の注意点

    いざERPを導入するとなっても、「予定よりコストがかかってしまった」「思ったようなシステムができず、かえって業務が非効率に」といったケースも見られます。こういった事態に陥らないためにも、まずは導入の目的を明確にすることが重要です。また、ERPは業務の変化に対応する必要がありますから、導入後の運用についても体制を整えておきましょう。そして、導入にあたって特に注意したいのが「既存業務をそのままERPに移行しようと考えないこと」です。特にオンプレミスからクラウドに移行する場合に、既存ERPの機能をそのままクラウドで実現したいと考えると、難易度が大きく上がります。

    ERP導入・移行は業務整理・改革の絶好の機会とも言えます。これまで当たり前と考えていた業務フローも、改めて見直すことで、標準にあわせても問題ないかもしれません。「どこまで標準に合わせられるか」「どうしてもカスタマイズが必要なものはなにか」をしっかり検討しましょう。

    中小企業の実態にあわせた活用をサポートする「Microsoft Dynamics 365 Business Central」

    数あるERPの中でも、中小企業向けERPとしてお勧めしたいのがマイクロソフト社のクラウドサービス「Microsoft Dynamics 365 Business Central(以下、Dynamics 365 Business Central)」です。中小企業にとって必要十分な機能が提供され、エンタープライズ向け製品と比較してコストを抑えて導入できます。
    なによりその特長はマイクロソフト製品との高い親和性にあります。Microsoft 365などとの連携はもちろん、特に注目したいのが「Power Platform」です。自動化ツール「Microsoft Power Automate」やBIツール「Microsoft Power BI」、ローコード開発ツール「Microsoft Power Apps」などを含み、これらを活用することで、ERP側をカスタマイズすることなく、標準機能と実業務のギャップを埋めることも可能になります。

    パシフィックビジネスコンサルティングでは、Dynamics 365 Business Centralの前身となる製品から取り扱っており、日本語対応パッケージ「J-Pack」を提供してきました。マイクロソフト社とも密な関係性を築き、Dynamics 365のアップデートに先立っての「J-Pack」対応・検証なども実施しています。各種機能にも精通し、「どの業務には標準機能で対応できるのか」「なにを追加で開発しなければならないのか」といった業務整理や提案、コンサルティングからカスタマイズ、周辺機能の実装までトータルにサポートします。

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