Dynamics 365 Tech Conference 2017

14 3月

日本の皆さん、こんにちは。吉島良平(Microsoft MVP for Business Solutions)です。いかがお過ごしですか?

私は今、Dynamics365 Tech Conference 2017に参加するため、米国シアトルに来ています。シアトルは、そうそう中学生の時に習いましたよね、ケッペンの気候区分で「地中海性気候」オレンジ色、懐かしーっ(笑)秋から春にかけては微妙な雨が多い都市ですね。到着した昨日も、、、、例によって、、、、Orz….

この時期のシアトルの典型的な気候
この時期のシアトルの典型的な気候

でも不思議と傘が必要なほど降らない事が多いんですよね。天気がいい時の夜景は結構綺麗で、僕も時間があるときにはよく見に行きます。

シアトル夜景
シアトル夜景

シアトルと聞くと、私はマリナーズ時代のイチロー、ジミ・ヘンドリックス、ワシントン大学に通っていたブルースリーが頭に浮かんできてしまいます。日本だと神戸市の姉妹都市で、企業としては、ボーイング社、ニンテンドー社、マイクロソフト社がありますね。あ、スターバックスの1号店や、タリーズコーヒーを思い浮かべる方もいるかもしれませんね。綺麗な街なので機会があれば是非遊びに来てください。

さて、前置きが少し長くなってしまったので、そろそろイベントについてまとめておきます。このイベントは(http://www.d365tech.com/home)年に1度シアトルにて開催されているDynamics365 for Operation (旧 Microsoft Dynamics AX/ ERP製品)の技術者・マーケティング担当者向けイベントです。世界各国から1700名ほどが集まりセッションやワークショップ、ネットワーキングを通して、製品の新機能や各々の市場動向の共有を行っています。場所はダウンタウンにあるコンベンションセンターで、この数年は毎年ここです。イベントの推奨ホテルはWestinで、今回私も安易にここなのですが、実際は隣にSheratonがあるので、こちらのほうが交通の便がいいように思います。

ConventionCenter
ConventionCenter

 

ConventionCenter2
ConventionCenter2

イベント当日の登録は、他のマイクロソフト関連イベント同様、凄い行列になるので、前日にすましておかれることをお勧めいたします。

Registrations
Registrations

最近のイベントでは、MobileAppsでイベントの内容やセッションスケジュール、路地回りなどの情報が確認できるようになっています。

MobileApps
MobileApps

でも、個人的には今回のようにカタログ↓もあると非常に便利でありがたいです。

NameTag&Catalog
NameTag&Catalog

本日13日より15日までの3日間でハンズオン形式で16セッション、セミナー・ラウンドテーブル形式で150(110がユニーク、残りはリピータブル)余りのセッションが開催される予定です。

DynamicsAXHistory
DynamicsAXHistory

オープニングは、Sri Srinivasan氏 ( General Manager for Microsoft Dynamics365 for Operation in the Cloud and Enterprise Group)によるDynamics 365 For Operation (以降D365O) のバージョンヒストリーを振り返る事からスタートしました。

Alysa for D365O Marketing
Alysa for D365O Marketing

最初にステージにパネラーとしてあがったのは、Alysa Taylor 氏(GM, Dynamics 365, Marketing)でした。.NETなどの開発をして10年ほどのキャリアで、D365O の強みを「用途に応じた構築」「生産性」「インテリジェント」「適用」という観点から過去の開発の経験を活かしてそれぞれ解説しました。

Alysa for D365 Marketing
Alysa for D365 Marketing

Siri氏は、通常ERPの導入において、「開発&構築」「トレーニング」「慣れる」ことが、ユーザーには非常にタフであり、D365Oはエンドユーザーの新環境への適用スピードを上げることを目的として改良を続けてきたと説明しました。なるほど、だからAlysaは「適用」という言葉を使ったのか、ここでそう感じました。

変化について
変化について

次にD365Oは、経験値に裏付けられた使いやすいパッケージであり、グローバル市場であらゆる業種に適用できる。そして、ウェブベースでかつAzure上で稼働するクラウドネイティブな完成されたソリューションであり、統合されたプラットフォームとアプリケーションライフサイクルでデータは担保されるため、効率的な変更管理を実現できると説明しました。

D365OAdoptionatPace
D365OAdoptionatPace

ここからはD365Oを適用した2つの事例紹介となりました。

Maersk Container Industries(http://www.mcicontainers.com)はデンマークの有名な乙仲企業の関連会社で(グループでDynamics AX、Dynamics NAV、Dynamics CRMを活用しているDynamics Loveな企業ですね)シングルインスタンスで複数国を管理し、カスタマイズをおさえ、6つの業種別ソリューションを適用したスピーディーな組立工場へのデプロイ事例として紹介されました。

MaerskContainerIndustory
MaerskContainerIndustory

2016年の11月にデンマークと中国を同時に本稼働、2017年1月にチリを、そして2017年の上期に中国の別の拠点を本稼働させるようで、本稼働までに15か月を要したとのことです。正直、これだけの期間が短いとも長いとも感じませんでしたが、D365Oの製品リリースから即、プロジェクトに取り組んだという事実(通常ユーザーは避けたがります)、そして製造のみならず、アフターセールス修理のビジネスもシングルインスタンスでカバーしている点は、すばらしいものがあると思いました。(実はDynamics AXもDynamics NAVもこの修理というモジュールの導入は結構あります。最近ではDynamics365 for Field ServiceとのERP連携についてグローバルでも問い合わせが増えてきているようです。)

MaerskContainerIndustory
MaerskContainerIndustory

次に、豪州の不動産業界への導入事例としてPEET(http://www.peet.com.au/)が紹介されました。豪州はローカライゼーションがシンプルとはいえ、これはちょっと驚きました。なんと6か月で関係会社の100社を様々な異なるシステムからD365Oにマイグレーションしたようです。連結会計やレポーティング機能を活用しているようです。

PEETPower BIもフル活用されているようですね。

PEET

今後は経費精算モジュール、人事管理モジュール、Dynamics365 For Sales (D365S)の導入を検討していくとのことです。やはりAPAC領域でも英語圏の取り組みははやいですね。やはりアジアでは豪州とNZが新製品への取り組みが一番はやいのでしょうね。

ここからは、製品Roadmapのお話が展開されました。

Roadmap
Roadmap

意外に知られていないのが、実はDynamics365には製品ロードマップを確認するサイトがありまして、もっとパートナーもユーザーも使ってほしいので、ここでご紹介しておきます。→https://roadmap.dynamics.com/

2016年の秋にリリースになった機能や商習慣対応などの機能概要の説明がざっとありました。

Roadmap
Roadmap

次に、2017年春にリリースになる機能概要の説明がありました。

2017SpringRelease
2017SpringRelease

アプリケーション側も多くの拡張が施されるのですが、マーケットから求められている「Cloud+Edge Early Preview」「Local Business Data GA」のリリースが待ち遠しい限りです。(この後に、Siri氏もここについて触れてくる)

次にOlga氏(D365O Program Manager)がステージに招かれ、Common Data Serviceを活用した一つのソリューションを説明しました。

Olga
Olga氏

彼女は元々Dynamics NAVのコストモジュールをデンマークで開発していたのですが、4年前からD365O(Dynamics AX)のチームに異動して、品目や原価に関する開発に参加しているようです。今回は品目のアトリビュートを選択しながら、最終的には仕入先に発注を出すというソリューションを説明していました。

次にSiri氏から分析とモバイルに関する拡張ポイントについて説明がありました。まず、分析はPower BIがより使いやすくなった事について触れ、Power BIのデータをクリックするとD365Oの明細が確認できるというデモンストレーションが実行されました。

モバイルアプリ側では、エアプレインモードでも経費精算のデータ入力ができ、オンラインになった瞬間にD365Oにレプリケーションされるというデモンストレーションが行われました。

更に、Power Appsで構築したサービスエンジニア向けのモバイルで顧客データ、地図や販売履歴、債権回収履歴、故障履歴、ソーシャルリスニングデータを表示することができ、ワークオーダーを入力すると、それがD365Oのサービスオーダーに流れるという解説がありました。(本日午後参加した別のセッション:Dynamics365 for Operations, PowerApps, Common Data Service, and Microsoft Flow)でもこれを掘り下げたでモンストレーションが行われたので、本イベント一押しのコンテンツはこれなのだと理解しました。確かに利便性、Agileな開発に相当ユーザーメリットがありそうです。

Dynamics365Oの構築方法として、下記の左より、「クラウド型」「ハイブリッド型」「設置型」があり、マイクロソフトとしては「クラウド型」が一番いいと考えている。「設置型」ではクラウドのメリットを享受できないし、「ハイブリッド型」では余分な投資と、リアルタイム性に問題が発生する場合があるからだとのようです。

DeploymentOption
DeploymentOption

日本の市場を考えると、この5年間は「ハイブリッド型」がまだまだ現実的なニーズとして存在しそうですが、パートナーは「クラウド型」でなるべくお客様にご納得いただけるように提案を継続するべきですね。

とそんなことを思っていたら、「Cloud +Edge」のデモンストレーションが始まってしまいました(笑)

CloudEdgeDemo1
CloudEdgeDemo1

左がEdgeで、右がCloudのD365Oの環境を示しています。

CloudEdgeDemo2
CloudEdgeDemo2

クラウド環境で受注入力を行い、Edge環境でバーコードリーダーを使うようなイメージで倉庫のピッキング処理、出荷処理を実施、クラウド環境で売上計上処理をおこない「Cloud+Edge」環境の連携デモンストレーションが行われました。

CloudEdgeDemo3
CloudEdgeDemo3

ユーザーの皆さんには、クラウドやPowerAppsなどがオペレーションの自動化に役立つか?考えを私たちのプロダクトマネージャーにフィードバックとして共有してほしい。どのようにプロジェクトを推進すればアジャイルなD365Oの導入ができるか?

ビジネスコンサルタントの皆さんには、どのようにビジネスプロセスを作用させるか?アジャイルな導入手法を継続的に利用し、ユーザー事例からやるべきこと、やらざるべきことを確認してほしい。どのような効率的な分析、モバイル活用をすれば導入の自動化ができるのか?考えてほしい。

導入コンサルタントや開発者の皆さんは、LCS(Life Cycle Service)やクラウド上での開発方法や技術を活用し、複数のAppsをどのように設計・活用するか?考えてほしいとなげかけました。

ConferenceGoDo1
ConferenceGoDo1

最後に職種別の推奨セッションを説明し、初日午前のキーノートが終了としました。

ConferenceGoDo2
ConferenceGoDo2

3日間行われるセッションをオープニングで推奨するのはとても丁寧でいいなと思いました。

総じて、D365Oの開発&インフラのTOPだけにあってコンテンツがそこに偏っている点、このメモを記述しながら改めて、オープニングキーノートのストーリーに違和感を覚えましたが、明日は、Mike Ehrenberg氏(Microsoft Technical Fellow, CTO for Dynamics AX/NAV)がなんとかしてくれるでしょう(笑)

同日にD365Oの「設置型」のプレビューのリリースが2017年の春に、「設置型」「ハイブリッド型」のリリースが2017年夏という記事が出ていましたのでURLを記述しておきます→https://japan.zdnet.com/article/35098042/

午後は、「Better Together 」: Dynamics365 for Operations, PowerApps, Common Data Service, and Microsoft Flow」「Customer Show Case:Dynamics 365 for Operations in Manufacturing, Distribution and Plant Maintenence」「Microsoft Feedback Session: Advanced Analytics with Business Data and IoT」に参加しました。

リリース直後の製品の導入に苦労を重ねたユーザーの声は大変重たいものでした。彼らが取り組んだアセットを少しでも自分のクライアントに共有できるようしっかりと情報を持ち帰りたいと思います。

いよいよDynamics365はAzure IoT Suiteと連携してお客様に提案するべき製品になってきましたね。午後自分が参加しセッションはそれぞれ充実した濃い内容が多かったので、これらは帰国後まとめる予定です。

D365&IoT1
D365&IoT1

今日はそれぞれのセッション、展示会場のブースでで多くの質問をさせていただきました。午後のセッションでは面白いIoTがいくつか共有されたので帰国後Tryしてみたいと思います。

D365&IoT2
D365&IoT2

せっかくシアトルまで来たので、残り2日間楽しみながら学びたいと思います。

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2日目のオープニングキーノートが始まろうとしています。最初にDynamicsユーザーグループについて説明がありました。

Day2Opening
Day2Opening

Mike Ehrenberg氏(Microsoft Technical Fellow, CTO for Dynamics AX/NAV)が登場し、恒例のMicrosoft社のミッションについて説明がありました。この際だから覚えてしまいましょう。

「Empower every person and every organization on the planet to achieve more」

MicrosoftMission
MicrosoftMission

続いて、こちらも恒例の”Digital Transformation (デジタル革命)”について下表を用いて説明されました。

DigitalTransformation
DigitalTransformation

昨年度の11月に、MVP Summitで出向いたシアトルのマイクロソフト社オフィスビルでも同じ表を見かけました。本当にキーワードが社内徹底されていてすばらしいですね。

他社との差別化というキーワードで、マイクロソフトはユニークな存在であり、Data層に、Office365、Dynamics、Azure、Bing、LinkedInをもっていることも強みだと解説しました。

Diffirenciate to other vendor
Diffirenciate to other vendor

38のAzure Regionがあり、日々大きな投資を継続しており、森林を削って(笑)データセンターを拡大しているとのことです。澤円さんの説明でもよく見かける図を使っていました。

AzureRegion
AzureRegion

Dynamics365はクラウドネイティブであることから、AzureのSQL Paasであり、SQLを活用していることから分析データの生成も容易で便利、災害対策も問題ありませんと説明しました。

AzureValues
AzureValues

こちらも恒例になってきましたが、「Every company is a software company」についてデジタル革命を行うためには、ここは避けて通れませんよと解説しました。

Message from CEO
Message from CEO

ここから昨日に続いて、D365Oの小売業である家具屋さんのニュージーランドでの導入事例紹介がありました。Città (https://www.cittadesign.com/)です。ご存知の方もいるかもしれませんが、韓国で結構はやっていますよね。

Città
Città

この事例で凄いのは、70日-90日でビックバン本稼働したという実績です。プロトタイプを活用したからといってこの期間で本稼働できるのは英語圏の強さでしょうね。財務会計、在庫管理、そして店舗管理を実装。POSの画面も綺麗で、Azureを活用した事で構築のスピード感がとてもよかったというフィードバックがありました。すばらしいですね。

citta
citta

世界レベルの導入は本当にすごいですね。ユーザー側もリスクを結構とって導入に挑戦するので日本の感覚になれているとグローバル事例にはいつもびっくりしてしまいます。

citta
citta

さて、ここからがこのイベントで企画者が一番伝えたかったところだと思います。

Dynamics365
Dynamics365

Dynamics365という製品名からもわかるように、ERPやCRMという難しい英単語は消えました。つまりはユーザーが必要な機能を利用できるように変わっていくのだと考えられます。しかしながら、ERPとCRMの情報をつないでいく必要があります。このイベントではCDS(Common Data Service)というキーワードがあらゆるセッションで利用されており、どのようにデータ連携していくか?がDynamics製品のトレンドになりそうです。

CRM+ERP
CRM+ERP

PowerApps、Microsoft Flow、PowerBIの活用や、AzureのCognitive ServiceやMachine Learningからつくったフォーキャストデータ連携などが今後のDynamics製品の提案では必要となってきます。これらを活用することで、企業がソフトウェアの会社になりデジタル変革を進めていくためのソリューションになるというメッセージが発信されました。

マイクロソフトが持つ、Common Data Model には、Office365、Dynamics365、PartnerがもつISV(業種別ソリューション)などの資産があり、これらをどのように活用していくか?がそれぞれの企業の差別化になっていくのでしょう。

CDS-CommonDataModel
CDS-CommonDataModel

新しいアプリケーションをつくってください。簡単です。という話から、

Apps
Apps

初日の午後のセッションでも説明があった、CDS+Power Appsで構築したモバイルアプリの解説がはじまりました。

CDS+PowerApps
CDS+PowerApps

左上の名前や役職などの情報はExchangeから連携されている。デバイスはAzure IoTから連携されていて、下の一つのデバイスを選択すると、

CDS
CDS

下記のような情報が確認でいます。これらは4-5日ですべて構築できるレベルのもので、一切カスタマイズをしていません。開発者でなくてもアプリケーションの構築ができるのです。

CDS
CDS

是非、このイベントの残りの期間でCDSにチャレンジしてくださいと括り、2日目のキーノートはクロージングとなりました。

ビジネスアプリケーションの領域はマーケットから「自動化」が求められており、マニュアルプロセスを削減、人の判断がなるべく入らない未来のシステムに向かって時代が動き始めています。マイクロソフトの製品群はマーケットのニーズに対してソリューションが出せるようなコンセプトで開発・製品化されており、システムを構築するSIerやコンサルタントは、製品戦略を正しく理解し、スピーディーに開発をして、その運用がユーザー側で行えるように基幹システムの中身を開発するのではなく、CDSなどを活用して日本人が求める利便性の追求などへの対応策としていく必要があると感じました。

また当然ながらCognitive ServiceやMachine Learningなどの機械学習や、Bot Serviceなどを活用して、これまでのERP/CRMパッケージビジネスでは考えられなかった新しいソリューション&サービスを提供できるよう各パートナー、コンサルタントは製品開発していかないといけないという事を改めて感じる出張になっています。

Microsoft MVP for Business Solutions
Microsoft MVP for Business Solutions (2日目のランチ後にみんなで)

資料も充実しているので、日本で情報共有します!残り1.5日楽しみながら、諸々学び帰国しますね!